米国景気と住宅市場の行方

(マットカーター氏記事を要約)

米国住宅ローンの二次市場をまとめる政府系銀行である FANNIEMAE(ファニメ)が米国住宅市場に関する アンケートを発表した。同調査は米国各地から18歳以上で家計において意思決定者である 1069 人を対象 に行われた。

結果からまずわかったのは昨年から急速に上昇したローン金利の影響で家を買うことを諦める人が大半を 占めていることである。ロックイン効果と呼ばれるもので現在マイホームを所有している人も買い換える と 2 倍以上の金利となるため売ることを避けている。そのため市場に出ている売り物件(在庫)は極端に 少ない。

マイホーム購入に関する肯定感

「住宅購入に対する肯定感は昨年から低いレベルで推移している。今購入するには相当高い支払いを覚悟しなければならない。しかし在庫が極端に少ないため住宅価格が極端に値下がりするという傾向は見られない。」と調査を主宰したファニメチーフエコノミストダグダンカン氏は述べている。

購入にとって重要な住宅金利の動向について今後 12 ヶ月で金利は下がると回答した人は全体の 16%に止 まっている。この数値は 1ヶ月前の 5 月における 19%より下がっており、消費者は金利に関して悲観的 である。逆に金利は上がると答えた人は 50%から 47%へと下がっており、金利のピークは近いという見 方が大勢を占めている。つまりほとんどの人が金利は高止まりが続くと見ている。

ダンカン氏は「住宅ローン金利下落に関する期待感は落ち込んでいる。2023 年後半にはさらに上昇する と見ている人が多い。住宅販売件数は記録的な現象を見せるとともに、景気後退が 2024 年にかけて起こる。」という。そうなれば住宅ローン金利がようやく下落することになる。

今後12ヶ月で住宅金利はどうなると思うか

(ブルー:下がる、レッド:上がる、グリーン:そのまま、ブラック:差引分)

住宅金利は 2022 年初めの 3%前後から現在 8%近くにまで記録的な上昇を続けている。連邦政府はインフレ懸念が強い限り高低金利を上げるという姿勢を崩していない。

住宅価格は今後12ヶ月でどうなるか

(ブルー:上がる、レッド:下がる、グリーン:そのまま、ブラック:差引分)

住宅価格の動向については 12 ヶ月以内に 26%の回答者が下がると答えている。しかし上がると答えた人は36%と上回っている。しかし最も多かった回答はそのままの37%であった。

今マイホームは買い時かという質問に対してはNOの78%が YESの22%を大きく上回った。

マイホームは今が買い時か

(ブルー:YES、レッド:NO、ブラック:差引分)

同様に売却に関しては売り時だと回答した人が 64%で、売り時ではないと答えた人の 36%を上回った。 ただこれは単純に売却するだけのケースであり次に買い換えるという要素を加えると全く逆転してしまう。
つまり今は売りも買いもすべきではないという考えが主流となっている。

マイホームは今が売り時か

(ブルー:YES、レッド:NO、ブラック:差引)

また家計にとって重要な仕事に関して、多くの人が短期的には心配ないと回答している。心配だと答えた 22%に対して心配していないと答えたのは 78%と圧倒している。米国民は今のところ職を失うことにあまり心配していないことがわかる。

今後 12ヶ月で失職すると心配しているか

(ブルー:NO、レッド:YES、ブラック:差引き)

マイホームに関して売りも買いもしないと回答している米国民の多くが景気は今後良くならないと見ている。インフレがすぐにおさまりそうもなく物価高は確実に国民生活に悪影響を及ぼすと考えている。これは長期化すればするほどマイホームを維持することが難しい世帯が増えて債務不履行や競売といった不動産不況に陥る可能性も否定できない。

今後の景気は良くなると思うか

(ブルー:YES、レッド:NO)