不動産ビジネスのワンストップに潜む罠

(レバー社マーケットレポートを要約)

リサーチ企業レバー社はポータル最大手の Zillow 社と住宅ローン最大手のロケットモーゲージ社がそれ ぞれ同業他社を合併したことについて否定的な見解を発表している。

Zillow や Redfin といったポータルサイトに入るとクリック一つで住宅購入の全てが可能なサービスが用意されている。売り物件を探しその価値を確かめ、ポータルでそのまま物件の売買をすることが可能にな っている。これまで必要書類を何週間もかけて揃えて、電話やメールでやり取りしていた住宅ローン審査 もポータルサイトで瞬時に申請が可能になった。 しかしこうしたワンストップサービスはユーザーにとって必ずしもベストだとは言えない。大手ポータルサイトは不動産取引に関わるあらゆるサービスを1ヶ所で提供することによって自社に全ての売り上げをもたらそうとしている。競合他社を排除して一社で独占できれば必ずしもサービスを割安にする必要がない。消費者にとって選択肢の幅が狭まっている。Zillow や Redfin は業界を統合することによって自社の売り上げ・利益を最大化しようとしている。

両社の住宅ローンサービスに不動産エージェントが顧客を紹介すると報奨を受け取れる慣行に対してジョーバイデン前大統領は立派なキックバックシステムであると批判していたが、トランプ政権になってから その取り締まりを中断している。中小の住宅ローン企業は競争力がなくなり、消費者にとってはローンの選択肢が減って不利な条件で融資を受けるケースが増えている。 本来なら消費者がうまく住宅ローンレンダーを選べば30年返済のローンで 1200 万円以上の支払いを節約することができる。カリフォルニア州、ハワイ州、ワシントン州などではその節約額がさらに大きくなる。不動産企業やポータル企業が運営する住宅ローンを利用した場合、手数料、毎月の支払い共に高くなることが知られている。

Zillow 社の最新調査によれば住宅を購入するときにローンする買い手の割合は 80%を超えている。購入時に住宅ローンの申請から始める買い手の割合は 40%、不動産エージェントを誰にするか決めていない人の割合は80%となっている。ここに大手不動産企業やポータル企業がビジネスチャンスがあるとみて囲い込みをしようと狙っている。
Zillow 社は元々ポータルサイトで情報提供だけであったが、自社物件を売買し住宅ローン事業にも手を伸ばしている。昨年同社の住宅ローン売り上げは対前年比で80%伸びている。

一方レッドフィン社は今年7月に住宅ローン事業でナンバー2企業のロケットモーゲージ社に買収された。

両社ともワンストップサービスを使って住宅ローン事業と仲介事業の両方を取り込もうとしている。

従来型の不動産ビジネスでは数多くの関連業社が一つの取引をサポートしていた。エージェント、保険会社、住宅ローン企業、鑑定士、家屋調査士などがそれぞれ分業で専門分野のサポートをする慣習があった。この数年で上記2社はその全てを自社で賄おうとしている。

Zillow 社は 2018 年にモーゲージレンダーオブアメリカ社を買収して住宅ローン事業をスタートさせた。 Zillow ホームローンの始まりである。2024 年に同社の住宅ローン事業売り上げは 1 億 4500 万に達してい る。同事業の目的は同社顧客が住宅を購入する際にローンサービスを通じてより早く、より簡単に購入で きるようにすることであると規定している。アーカンソー州にあるリサーチ企業ステファン社代表ジョン キャンベル氏は「Zillow 社のエンジンは住宅ローンサービスである。近いうちに同社モーゲージビジネ スは全米トップ 20 に入るだろう。」と述べている。

一方ロケットカンパニーはレッドフィン社を買収した前後に住宅ローンの支払いなどアフターサービスを 提供する Mr.Cooper 社を買収している。両社が取り扱う住宅ローンは 1000 万人の借り手、2 兆 1000 億ド ルの取扱額に達すると見られている。これは住宅ローンサービス事業のシェアにして約 6 分の1に当た る。
その直後ロケット社は Redfin 社を買収している。Redfin 社が取り扱う物件数は 100 万件である。ロケッ ト社 CEO バルンクリシュナ氏は「Redfin ポータルを利用する 5000 万人の顧客が物件検索・仲介と住宅ロ ーンの両方を利用することができる」という。

買収後3週間で 20 万人以上の Redfin ユーザーがローン事前審査に登録しており、買収の効果は予想以上 であったようだ。2027 年までにロケット社では Redfin 経由で 6000 万ドル以上のローン事業売り上げが あると見ている。ロケット社の新たな広告メッセージは「Redfin で物件探し、ロケットで融資!家探し は簡単。」となっている。

Zillow 社では前述の通りエージェントが Zillow から潜在客をもらった場合その客を同社の住宅ローンに 呼び込むという不文律がある。そこでローンをしない場合、リード(潜在客)はなかったことになる。こ のやり方(キックバック)について違法性があるということでかなりの議論が出ているが、ライバルのロ ケット社・Redfin でも同様のビジネスモデルを構築する予定がある。

Steering(誘導)と呼ばれる一連の行為は RESPA(Real Estate Settlement Procedure Act)という連邦法 によって禁じられた行為である。消費者金融保護局がその取り締まりを任せられているが、トランプ政権 下で同委員会は 1400 名以上の解雇を行った。そのためもあって Steering に対する取り締まりはその後行 われていない。不動産・住宅ローン大手他社はこれをみて Zillow 社、ロケット・Redfin 社の動きに追随 する可能性が高い。

結局一連の出来事によって消費者にとってより狭い選択肢から不動産・住宅ローンに関するサービスを選ばざるを得なくなった。大手による寡占化が今後ますます加速化していくと思われる