(マーケットレポートを要約)
住宅系不動産業界において売り物件を市場に出すやり方で業界内の対立が続いている。売り手はこの状況をよく把握しながら物件を売り出す必要がある。

オンラインポータル最大の Zillow 社や全米不動産協会(NAR)を相手に不動産企業が提訴している。そこには売り物件の情報は誰がコントロールするかという究極の問題が提示されている。 提訴した2企業は売り物件の情報は全て一定期間内に MLS(日本のレインズの米国版)に記載することが 義務付けられている現状のルールを改正して、物件情報を一部プライベートにして一部のエージェントや 買い手だけが見られるようなシステムにすべきであると主張している。
現状のルールでは媒介契約が締結されてから 24時間以内に MLS の記載されて米国全土から1物件の情報にムラなく、遅れもなくアクセスすることができる。これにより売り手にとって最も多くのエージェント や買い手に物件を検索してもらいひいては最高額・最短期間の取引が可能である。
NAR や Zillow 社はオープンでフェアーな取引が可能であると考えている。 オンライン不動産企業大手レッドフィン社シアトルオフィスでエージェントを務めるデビッドパルマー氏 は「最も多くの買い手に物件情報を見てもらえる現状システムは売り手にとってベストである。」と述べている。
消費者政策センター理事ステファンブロベック氏は「2つの提訴は一部の買い手だけに物件情報を提供する偏ったマーケティングであり、自由な消費者行動を阻害するものである。住宅系不動産情報は本来誰もがアクセスできて透明性があることが重要である。」とプライベートリスティングを批判している。
提訴した企業の一つであるコンパス社は Zillow 社が媒介契約から 24 時間以内に MLS に掲載しない企業の物件は Zillow社で掲載しないというポリシーが自由競争を阻害するとして提訴している。いわゆる‘Zillow 禁止令’に対する抗議である。対するコンパス社では不動産企業各社で物件を MLS に記載しない場合もあって良いのではないか、その裁量権はその企業にあっても良いのではないかと主張している。
対する Zillow 社広報部のトップは「売り物件情報を記載しないで市場から隠すという行為は市場全体を歪めてしまう。消費者にとって選択肢が減る。これは売り手、買い手、エージェント、しいては業界全体 に悪影響を及ぼす。」と猛反対している。
2つ目の提訴はお宝物件取り扱いを専門とする ThePLS.com 社が NAR を相手取ったケースである。同社の創業者モウリシオウマンスキー氏は「リアルハウスワイフインビバリーヒルズ」「バイイングビバリーヒルズ」といった人気リアルティー番組にも出演するセレブでもある。 同社は富裕層やセレブ向けプライベートリスティングで売り上げを上げており、MLSのような万人向けの情報では富裕層やセレブは納得しないと主張している。NAR が 2017年に設定した Clear Cooporation Policy(媒介契約締結から 24時間以内に MLS に掲載しなければならないというルール)に真っ向から反対している。
これに対して NAR 広報担当者は「Clear Cooporation Policy こそ取引に透明性と公平性をもたらしている。自由競争こそ不動産取引を基本である。」とその立場を崩していない。
プライベートリスティングはデメリットばかりではない。売り手のプライバシーを保護する、売り手の経済的な状況について間違った情報が流れないようにするといった意味においてメリットがある。
しかし一方で多くの売り手にとって売り物件を短期に最高価格で売却することが最大の目的である。ある 不動産アナリストがワシントン DC を含む6州において6ヶ月間で 10 万件以上の売り物件を調査した。プリマーケットと呼ばれる MLS 掲載以前からプライベートでマーケティングした場合と通常のように MLS だけでマーケティングした場合を比較したが、その結果プライベートリスティングにした場合のプラス効果 はほとんど見られなかったという。 「経済的な面でプライベートリスティングのメリットはない。オフィス内だけの情報共有は買い手、売り手に対して情報がうまく行き渡らない状況を生み出し結果的に市場をより狭くゆがめてしまう。」とこのアナリストは結論づけている。
前述消費者団体のブロベック氏は「売り手はプライベートリスティングをする権利を有するが、それによってリスティング契約を有するエージェントとその不動産企業に取引をコントロールされてしまう可能性が高い。その結果価格が低くなる、売り出し期間が長期化する、エージェントの立場が売り手側からずれてしまうといったマイナス面が発生するケースが多い。」と指摘している。
