(業界紙レポートを要約)
ZILLOW 社の調査によると米国で住宅価格中間値が100万ドル(1 億5700 万円)を超えた都市は550を超えたという。しかし選ばれた都市のほとんどは2024年のホットな市場には属していない。住宅市場(売買)は二極化が進んでいる。
一つのグループは住宅価格が100万ドルを超える市場における住宅所有者で彼らは3%前後の低い住宅金 利を支払っているため売却することに消極的である。もう一つのグループはこういった市場で住宅を購入したいが、予算が合わずまた物件の選択肢も少ないため購入には悲観的で、物件を賃貸するか実家に身を寄せることでなんとか生活しているグループ(主に若者)である。持てる者と持たざる者との差ががはっきりしてしまった。
100 万ドルを超える住宅に住むというアイデアは昔から米国人の夢として存在した。マンハッタン、ビバリーヒルズ、マリブといった地域はほとんどの米国人にとって映画の世界で、実際には実現できない理想であった。ただ現在普通に住んでいたはずの中流層向け住宅が100万ドルを超えるレベルになっており、 これは誰にも想像できなかった事態に違いない。
550都市のうちカリフォルニア州がなんと210都市を占めている。同州大都市圏であるサンフランシスコ、ロサンジェルス、サンディエゴといった都市とその郊外に100万ドル以上の住宅が集中している。東海岸ではニューヨーク、ボストン、ワシントン DC、マイアミなどの都市周辺に集まっている。 こういった周辺都市は大都市で働くために人々が他の地域から移住してきたエリアである。しかし今では普通に働く人が簡単に手に入れられない価格に上昇している。米国住宅の中間値は50万ドル前後なのでほぼ2倍の値段がついている。
戸建レントの地域別比較・推移
(% ライトブルー:2022年2月から2023年2月。ダークブルー:2023年2月から2024年2月)
(コアロジック社より)
大都市とその周辺で住宅購入ができない人々は住宅価格が安い地域に移住している。フロリダ州から西にアリゾナ州までをカバーして北には南北カロライナ州までをカバーする気候の温暖なサンベルト地域に新 たな人口移動が起こっている。今年米国内でホットな住宅市場は、このサンベルト地域に加えてオハイオ 州クリーブランド、ニューヨーク州バッファローなど寒くてもさらに価格が安いところが選択されている。ホット市場上位10市はいずれも米国住宅価格中間値を下回っており低価格が人気の大きな要因だといえる。
次に地域別家賃の推移を見てみよう。注目すべきトレンドは大都市におけるレントが昨年は一時期落ち着いたかに見えたが今年に入って再び上昇局面にあることだ。戸建だけで見ると今年2月の全米賃貸料は昨 年同時期より3.4%の上昇となっている。一方ニューヨーク市では 6.9%上がっている。昨年大幅に上昇し たマイアミ(-3.1%)やオースティン(-1.3%)では逆に下がるなど地域差がある。 米国民は賃貸に関してパンデミック時のリモートワークから少しずつ以前の出勤地を含めて職場に近い大都市に戻る傾向が見られる。3ベッドルーム2バスルームの戸建をとって見ると、米国賃料の中間値は毎月$2100であるが、ニューヨーク、シアトル、ボストンなどでは$3200と高いことがわかる。
賃貸調査を行ったコアロジック社ではさらに各地域の中間値と比較した賃料水準別グループに応じた変化 (2023年2月から2024年2月まで)を発表している。昨年は全般的にレントが少し下がったことを考えるといずれの地域も今年に入ってから上昇傾向は明らかである。
• 低家賃エリア(地域の中間値の 75%以下)
-7.3%
• 低-中家賃エリア(地域の中間値の 75%-100%)
−5.7%
• 中-高家賃エリア(地域の中間値の 100-125%)
-4.4%
• 高家賃エリア(地域の中間値の 125%以上)
+0.2%
• 集合住宅:戸建
2.9% : 3.7%
中でもニューヨーク市は 6.9%と大都市圏では最も高い伸び率を示した。ついでシアトルが 6.8%、ボストンが 6.4%と伸びたが、マイアミは-3.1%、オースティンは-1.3%と下がっている。ロサンジェルスやサンディエゴでは過去1年間で高い上昇が見られなかったものの2年続けて4%台と堅調な値上がりを続けていることがわかる。シャーロット、セントルイス、オーランドなどでは 8%近い上昇率から2%台へと変 化している。今回は大都市圏の中でもより人口と職場が密集した地域で家賃の上昇が大きかったとみと良いだろう。住宅価格やレントが安かった地域では急激なレントの上昇が沈静化したということになる。
このように住宅売買価格、家賃はともに就業人口の移動に影響されて地域や都市によって二極化もしくはさらに複雑な動きをしている。公定歩合や金利が下がればさらに新たな変化が見られるだろう。