不動産ポータル利用実態

(Zillow 社報告を要約)

米国で最大不動産ポータルサイトであるZillowは昨年1年間に2500億回の問い合わせを受けている。その内容をまとめた報告書が同社から発表された。これを見ると米国民が不動産に対してどのような考えや 行動パターンを持っているかがよくわかる。

同社は AI を利用したナチュラルランゲージサーチと呼ばれるサービスを昨年より開始している。このサービスを利用すると不動産に関して消費者が家族や友人に話すような形で気軽に情報を入手することができる。

このサービスでは「シャーロット市内裏庭つき戸建で70万ドルくらいの予算」と入力するだけで AI が検索してくれる。従来のような四角いスペースに各検索項目を入力するよりずっと簡単にすばやく検索がで きる。検索のフィルターがこれにより無限に拡大した。またこの検索データから消費者の求める機能やト レンドを同社で解析して AI にマシンラーニングさせることが可能となった。

検索でよく登場するキーワード

まずキーワードのトップ10は以下のようになる。

1.ガレージ
車だけではない実用的な倉庫

2.裏庭
プライベートな屋外空間

3.暖炉
暖かさと快適さを提供するアイテム

4.ウォークインクロゼット
欠かせない収納スペース

5.パティオ
家の内部と外部を繋ぐ快適空間

6.オープンフロアープラン
部屋と部屋の間仕切りを無くして広く機能的に使うためのモダン空間

7.プール
暖かい地域におけるラグジュアリーアイテム

8.ファミリールーム
家族が楽しめる共有空間

9.地下室
さまざまな使い方ができる追加エキストラスペース

10.グラニット(天然石)カウンタートップ
キッチンやバスルームに最も必要なデザインアイテム

Zillow社副社長ニコラススティーブンス氏は「ナチュラルランゲージサーチを通じて米国不動産のユニークなトレンドがわかる。通常のサーチフィルターよりさらに詳細にわたる消費者ニーズを汲み取ることができる。」と述べている。

その他に見られた特質について見てみよう。

空調システム
空調システム(特にセントラルヒーティング&エアコンシステム)は調査対象となった30都市中22都市で検索のトップ3に入った。これまで温暖な気候であまりヒーティングが重要視されなかったアトランタ、シャーロット、ダラス、ジャックソンビル、ロサンジェルス、ナッシュビルといった都市においてヒーティングが消費者から強いニーズが出ている。これは近年こういった地域においてこれまでにない寒い冬となっていることが要因としてあげられる。

ビュー
消費者はビューのある家を求めている。シアトルなら山、街、そして海のビューを消費者は求めている。マイアミならオーシャンビュー、アトランタやサンフランシスコなら街のビュー、コロラドスプリングなら山のビューと地域によって求めるビューが違う。

特筆される検索キーワード
アトランタではバスルームに洗面台が2台あること。ネープルではテニスコート、クラブハウス、瓦屋根。ニューヨークやマイアミではジムやフィットネスルームを求める声が強い。フィラデルフィアでは地下室と路上の駐車スペース、サンアントニオではキッチン内で食事を取れるスペース、チューソンでは珍しくコンテンポラリースタイルの建物を検索するケースが多く見られた。

ニューヨーク市内ではスペースと便利さの観点からテラス・バルコニーと車の出し入れなどの用事をしてくれるドアマンの検索が多かった。同市は密集率が高くそのため少しでも広いスペースを求める声が強い。地下室は倉庫機能だけでなく改築して賃貸スペースとして貸し出す人も多い。そのほか共同ランドリーではないユニット内ランドリー、ペットポリシー、食洗機、エレベーター、ドアマンなどスペースが限られたニューヨーク市内ならではと言える検索が目立っている。