(Redfin 社報告を要約)
米国で住宅を所有することが最も困難になりつつある。2023 年に米国世帯所得の中間値に当たる年収 $78,642 を得ている世帯で米国住宅価格の中間値に当たる$408,806 の住宅を購入する場合、収入の41.4%を住宅費に充てなければならない。2022 年における数値は38.7%だったのでそれをさらに超えて記録を更新したことになる。
米国で平均的な世帯が平均的な住宅を購入した場合の住宅費対収入の割合推移
(住宅費中間値/世帯所得中間値%、2012年から2023年まで)
上記調査はレッドフィン社が最近行ったもので、ローン金利は 6.73%、頭金 20%、住宅費にはローン利 息、元金、固定資産税と保険が含まれている。管理組合の管理費や特別追加固定資産税は含まれていな い。通常融資銀行がローン承認に求める割合は 30%なので現在の数値はそれをはるかに超えている。 30%以内に抑えるためには年収$109,868 が必要であるという。年収の中間値より$31,226 高くなってい る。また 2012 年と比較すると住宅費の比率がほぼ2倍に跳ね上がっている。
レッドフィン社上級エコノミストエリジャキャンパ氏は「インフレ、住宅価格上昇、ローン金利急上昇、 少ない在庫という要素が同時に重なって近年にはない住宅購入難を招いた。良いことは 2024 年すべての 要素が少し和らぐことになるので購入がその分容易になる。」と述べている。
さらに住宅費と収入を比較してみると 2023年に住宅購入した世帯における住宅費の中間値は毎月$2,715と 2022年より12.6%増加している。同期間に年収の中間値は 5.2%増加して$78,642 となったが住宅費の高騰についていけていない。30 年固定金利はコロナ期最低 2.65%まで下がっていたが、8%でピークを迎 え最近少し下がって 7%前半で止まっている。急激なローン金利の上昇により買い手需要は激減したが、 その分誰も売却しないため在庫が少なく価格は高止まりのままである。$408,806 という中間価格は記録 的な価格である。低いローン切りをキャンセルしてまで売却や買い替えをしようとする住宅所有者は少な い。そのため価格の高止まりが続いている。
次に地域別に見てみよう。
オースティン市は中間年収が$99.523 で中間住宅価格が$456,950 である。住宅費用/所得が 36.6%と比較 的低い水準となっている。さらに 2022 年の割合が 37.7%だったのでそれより下がっている。同市は調査 した 50 地域中唯一この割合が1年間で下がった都市圏である。
割合が少し上昇した地域には、デトロイト市(+0.7%で 18.5%)、カリフォルニア州オークランド市 (+0.7%で 53.3%)、アリゾナ州フェニックス市(+0.9%で 40.2%)、ラスベガス市(+1.2%で 43.8%)など が上がっている。これらの地域はコロナ禍で急激に住宅価格が上昇したが、その後多くの人にとって安く なくなり需要が減少しているという共通点がある。各地域の価格をみるとオースティン市(-9.2%)、オ ークランド市(-5.0%)、フェニックス市(-4.1%)、ラスベガス市(-3.6%)となっている。
逆に住宅費が所得に対して高い地域はディズニーランドがあるカリフォルニア州アナハイム市がトップで ある。中間所得$92,306 の 88.3%が中間価格の$1,022,075 で購入する住宅費に使われるという異常な事 態となっている。これでは生活がまるで成り立たない。 上昇率が高い順だとマイアミ市(対前年比+7.1%で 54.1%)、ウェストパームビーチ市(対前年比+6.2%で 49.1%)、サンディエゴ市(対前年比+5.9%で 64.6%)、ニュージャージー州ニュワーク市(対前年比 +5.6%で 42.8%)などとなっている。 こういった地域で共通しているのは住宅価格がいまだに上昇していることである。価格の高い地域から買 いやすさを求めてこういった地域に来るため州外からの買い手も多い。住宅価格はこの1年間でマイアミ 市(+8.2%)、ニュワーク市(+8.2%)、ウェストパーム市(+7.6%)と全米でもトップの上昇率を記録し ている。
住宅費率の高い順だとアナハイム市に次いでサンフランシスコ市(85.4%)、サンノゼ市(73.0%)、ロサ ンジェルス市(72.9%)、サンディエゴ市(64.6%)とすべてカリフォルニア州が占めている。住宅購入に 関して非常に困難であるため逆にレンタル需要が強いといえる。
割合が低くて済む地域のトップは 18.5%のデトロイト市である。それだけ収入に占める住宅費が少なくて 済む。次いでピッツバーグ市(23.5%)、クリーブランド市(23.8%)、フィラデルフィア市(23.9%)、 セントルイス市(25.2%)となっている。こういった地域で共通しているのは住宅価格の中間値が $300,000 前後で購入しやすいことである。
全米50地域における住宅費/所得の比較