カリフォルニア州でオンライン公証人制度を認可へ

全米最大の州であるカリフォルニア州でもついにオンライン公証人制度が認可されることになった。すでに他州44州で同制度が認可されておりむしろタイミング的には遅い。しかし同州の不動産取引件数や経済力を考えると今回の認可による影響は極めて大きい。

Remote Online Notarization(RON)と呼ばれる制度は同州上院議会での可決を受けてガビンニュウーサム知事が署名すれば施行という運びとなる。最後まで本人確認の有効性をめぐって論議が繰り広げられた。同州はシリコンバレーがあることもあってあらゆるイノベーションやIT技術が全米に先駆けて採用されているが、オンライン公証人制度については州政府の反対で認可が遅れることになった。同州法務局長であるパットキンセル氏は「法務局としては消費者保護とどのようにして運用するかについて十分な確認した後認可したかった。」と述べている。

オンライン公証人を実施する際署名者の本人認証をする必要があるが、第三者を介して本人の情報を登記データやその他の公的データを取得して照合するというシステムになっている。 これに関して全米基準及/技術協会(NIST)が規定する本人認証制度のレベル2を採用している。カリフォルニア州外でオンライン公証人サービスを行うとき州外であってもカリフォルニア州の裁判所で有効となる。

毎回公証サービスを行うときには暗号化されたデジタルジャーナル(台帳)に記入する必要がある。その際の様子をオンラインでビデオ/オーディオの両方で記録することも求められている。これは他州よりさらに厳しい本人確認方式である。またこれはCCPA(カリフォルニア州消費者保護プライバシー保護法)に準拠している。

施行は当初2025年からの予定であったが、2030年まで延期されることになりそうだ。技術的な課題がまだ残されているという。オンライン公証人制度は不動産や銀行関係だけでなく医療界、旅行業界、ビジネス全般でも重要である。公証人が少ない地方で便利なサービスである。オンライン公証人制度はエスクロー制度がなく不動産取引が弁護士を介して行われるニューヨーク、マサチューセッツ、ジョージア各州でもすでに採用されている。

RONの採用によりいよいよペーパーレスとデジタル化、リモート化が加速することになりそうだ。書式のデジタル化、デジタルサイン、そして公証人サービスのデジタル化により不動産取引は書類に関して物理的な作業が簡素化される。これまで不動産業界がこれによりまた新たな領域へと入っていくことになる。当初反対やクレームが出ることは必至であるが、一定期間経てばこれが新しい常識となる。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です