不動産ニュース

新築物件の状況について

(リリアンディッカーソン氏の記事を要約)

米国住宅市場における売り物件不足の要因の一つに新築物件の供給数が需要に追いつかないことがあげられている。新築物件供給数は住宅市場の動向を知る上で大きな役割を果たしている。 新築物件の定義から見てみよう。新築物件の売買としてデータに記載されるのは、売買契約が完了した時点または手付金が支払われた時点となっている。つまり物件が完成した時はもちろんこれから建築される新築物件も含まれている。また建築が完了していても売買契約がこれまで締結されていない限り新築と見なされる。 新築物件データはSurvey of Construction(SOC)で発生するが、同協会は米国住宅・都市開発協会(HUD)とUS Census Bureau(米国国勢調査会)によって運営されている。 新築住宅に関するデータは1920年代から修正記されており、1959年まではBureau of Labor Statistics(労働統計局)が扱っていた。その時点から前記の2エージェンシーに移行されている。

新築物件は住宅市場において新たな供給追加を意味する。全米不動産協会リサーチ部長ゲイコロラトン氏によると、「新築なしでは供給数は全く不足してしまう。リーマンショック以来新築供給数は極端に減少しその影響は今も続いている。」と述べている。 レッドフィン社エコノミストシェハリアーボッカリ氏は「新築は市場に供給数を追加するだけでなく、既存物件に住むオーナーが新築に移り住みその後に新規購入者が既存物件を購入するといったケースがあり、住宅市場の動向に大きな影響を与える。建築件数だけでなく、着工件数や建築許可数はそれ以前の動きを見る上で重要な指標である。」と説明している。

新築戸建住宅販売数の推移

(X1000戸、2007年1月から2020年12月まで)

(米国国勢調査会より)

新築供給数は歴史的に見て決して安定したものではない。1999年から2000年中盤までは戸建販売数に占める新築物件数は15%前後であった。2008年のリーマンショックを境にその割合は6%にまで落ち込んでいる。これはリーマン以前に増えすぎた在庫に対する調整期である。その後供給数は増加し続けているが、長期にわたる調整期の影響で未だ需要に追いつくには至っていない。現在米国はベビーブーマー世代の引退とミレニアル世代の活発な経済活動によってこれまでにない住環境の移動が盛んで、その結果住宅需要を押し上げている。例えばベービーブーマー世代はこれまでの世代と異なり引退してもアパートや引退者ホームに引っ越さず少し小さな家に引っ越したいという人が多い。ミレニアル世代は学生ローンの支払いなどで家を買いそびれていたが、最近になって低金利やレントの上昇も手伝って購入意欲が急上昇している。 これまで米国世帯が一軒の住宅に住む平均年数は8年であったが、近年13年にまで上昇している。つまり「ホームハッピー(家を楽しむ)」のトレンドが強くなっていることがうかがえる。特にシニアー世代でその傾向が強い。
今年5月における全米新築販売数は863,000件で、1年前に比べて50%上昇している。しかし楽観はできないとコロラトン氏は警告している。「建材コスト、特に木材のコストが急騰している。特にフレーム材は1年前より112%という上昇率で、ビルダーにとって大きなブレーキとなっている。」という。

物件のタイプで見ると上図のように最新の戸建/全住宅販売数比は25%と過去最高を記録している。コロナの影響で人々は庭があってより大きくプライバシーのある戸建でゆっくりと過ごしたいという希望を反映している。郊外で新築戸建というのが今最も需要のある商品のようである。

戸建販売件数における新築物件の割合推移

(% 1999年から2021年まで、)

(レッドフィン社より。データソースは米国国勢調査会・HUDより)