不動産ニュース

コロナで変わる住まいのニーズ

コロナウィルスで米国住宅市場はリーマン時代の再来となると思われたが、結果は全く逆で多くの地域で住宅 市場は昨年以上の販売件数を記録している。政府の休業補償、記録的な低金利とテレワークの普及により、消費 者の先行き不安は一時期より減っている。
こういった状況下において住まいに対する消費者のニーズも変わってきている。特に高額物件市場ではその変 化が著しい。
1. 都心型から郊外(リゾート)へ
リモートワークが進み大都市に住む理由が少なくなってきた。便利だがすべてが密な大都市では感染率も 当然高い。またBLM や反政府デモ、増え続けるホームレスなどで住環境は悪化している。そのため郊外に 移る動きが加速している。もしくはこれまで年に数回しか利用しなかったリゾート地域のセカンドハウス を住居とするケースも増加している。都会よりもスペースがゆったりとしており、安全で生活のペースも ゆっくりと流れることでリラックスできることが大きなメリットのようだ。例えばニューヨークではマン ハッタンから2 時間でいける海沿いのリゾート地であるハンプトンへの移動が増えており、ハンプトンは ホットな市場となっている。
2. スペース重視
これまではベビーブーマーを中心に住まいのサイズをコンパクトにしようとするダウンサイジングが主流 であった。パンデミックで家族が戻ってくる、ホームオフィスが必要、子供が遊べるスペースが必要とい った理由でより大きな住まいのスペースが好まれている。地下室が完備されている、敷地が広い、プール やテニスコートがあるといった具合である。敷地や床面積が必ずしも大きくなくても、プライバシーがあ る、海や池に面している、ゲートがあるといった付加価値にも人気が集まっている。
3. アウトドアダイニング
レストランのパティオダイニングと同様に家でもゲストを招待すれば家の中ではなく裏庭でBBQ や調理を して楽しむことが主流となっている。そのためアウトドアに内部と同じくらいのキッチンやダイニングス ペースが求められている。単なるBBQ セットではなく冷蔵庫、シンク、キッチンカウンターを備えたアウ トドアキッチンとダイニングスペースはラグジュアリー物件に不可欠なものとなった。日中の太陽や夜の 外気を避けてインドア並みにするため屋根付きパティオ、ヒーター、ファイアーピット、デッキ、テレビ やオーディオシステムなどを充実させるケースが多い。
4. アメニティーの充実
ゲストだけでなく普段利用する家族全員が楽しめるためのアメニティー充実も重要である。前述のアウト ドアキッチン・ダイニング、プール、テニスコート、プレーグラウンド、ジム、レクリエーションルーム、 ホームシアター、趣味の部屋など様々なアクティビティーをサポートできる住まいが求められている。 またこれまでその普及がゆっくりだったスマートホーム(ホームオートメーション)も加速化しそうであ る。アプリを使ってオーディオビデオシステム、空調、ライト、カーテン、スクリーン、ドア、風呂、キ ッチン器具、庭のスプリンクラーに至るまであらゆる機器をコントロールできる家はまさに時代のニーズ に合っている。
5. ホームオフィス
多くの人が家で仕事をこなしていることを考えるとホームオフィスはもちろん家で仕事ができる環境は最 も重要な機能と言える。スタディールーム、ライブラリー、アトリエ、スタジオ、ワークエリアなど多数 のバリエーションがあるが、基本は使う人の職種に応じた利用形態を目指している。ズーム会議やオンラ インスクールにも適応したIT 環境も必要である。
6. 屋外のリモデル
家の中をリモデルするより外に重点を置く傾向が強い。庭、パティオ、ランドスケープなどである。前述 の屋根付きパティオや影を生み出すひさしは必需品である。ガレージも車庫としてではなく、エクササイ ズ、オフィス、趣味の部屋など多目的に使用されている。
7. 広さと質のバランス
これまで住まいに対してより大きなスペースを求めるようになったという印象を受けたかもしれないが実 際には家でより多くの時間を過ごすようになった分質の高い住環境も同時に求められている。5-6 年前に リモデルしたばかりの家で、老朽化していなくても最新のデザインや機能を求めてリモデルするオーナー ーが増加している。これはライフスタイルの中で住まいに対してより大きな比重と期待をかけている証し に他ならない。