日系デベロッパー、米企業の買収増加

(ウォール・ストリート紙より)

日系デベロッパーは 1980 年台のバブル期に大型投資をして以来投資は小規模に抑えてきた。そのためこ れまでは中小の米国デベロッパーへのエクイティー投資という形で投資はあくまで間接的で買収という直接経営権を得るような形を取っていなかった。しかし最近の動きを見るとどうやらその時代が終わったようである。

2020 年以来日系デベロッパーが米国戸建住宅デベロッパーを買収したケースは23件に及んでいる。2013 年から 2019 年の期間と比較するとその件数は2倍以上になる。集合住宅デベロッパーの買収はさらに多 いとみられ現在米国住宅建築業界で日系のシェアは 6%に達している。 ジョンバーンズリサーチ&コンサルティング社代表ジョンバーンズ氏によると「買収は小規模で始まった が徐々に加速している。日系企業は長期戦略を見据えている。カナダやオーストラリアの企業も米国企業 の買収を進めているが小規模で、日系企業の買収規模とは比較にならない。」と述べている。

現在米国内の住宅建設ビジネスは高金利、アフォーダビリティー低下、高コスト、労働力不足、許可申請 の難しさなどが一度に重なりスローダウンが続いている。 この時期に日系ビルダー・デベロッパーは日本国内ではなく米国市場を大きなチャンスであるとみてい る。日本国内では出生率低下や高齢化が加速する中で今後大きな住宅需要が見込めないとみられている。 そのため海外に成長先を求めている。オーストラリア、EU、アジアも候補に上がっているが米国がその最 優先となっている。

今年2月住友林業がトライポイントホームを45億ドル(約7180億円)で買収発表した。トライポイント社はネバダ州ベースのビルダーで年間 5000 軒を建築する米国トップ20に入る企業である。買収が完了す れば住友林業は米国でトップ6のビルダーとなる。

投資銀行JTWアドバイザー社は日系デベロッパー数社にコンサルティングサービスを提供しているが、同CEOクリスジャシンスキー氏は「買収に関して法的な規制が一つのハードルになるとアドバイスしているが、日本の起業家はそれでもチャンスと捉えて買収に積極的である。」と説明している。

積水ハウス役員石井とおる氏は「日本国内は人口減少して住宅市場は縮小傾向にあるが米国はその逆でまだ相当の成長が見込める」としている。

新たに日系ビルダーが考えるビジネスモデルはプレハブ化である。日本では長年にわたって普及しているが、国土が大きい米国では工場からのロジスティックが困難で全く普及していない。日系ビルダーの市場拡大とともに米国でもこういったプレハブ化に向けた工場建設で採算が採れるようになる可能性がある。積水ではすでにプレハブ化に向けた準備を価格帯が比較的高い物件を対象に進めている。

石井氏は買収について「住宅市場が活発な時ならサインさえ出しておけば買い手がつき誰も積水ハウスに 会社を売却しようとはしないだろう」と述べている。 日米で大きな違いは金利差である。低い借り入れ金利を利用して積水ハウスは買収を狙っている他の企業 よりさらに強気のオファーが可能である。同社買収の仲介役を務めているのはウィーランアドバイザリー 社である。CEO のマーガレットウィーラン氏は「積水は買収で米国最大手のレナー社やDRホートン社に も打ち勝つことがある。買収に際して既存の社員を解雇せずそのまま雇用して、経営も持続させるケースが多い。そのため売り手企業が安心して売ることができる。」という。

2020 年にダイワハウスからの買収に合意して自社を売却したトゥルーマーク社元オーナーであるマイケ ルメープル・グレッグネルソン両氏は当初会社の一部を投資家に売却する予定であったが、ダイワハウスが提示した敵対的でない買収案に同意して売却を決定したという。「我々の持っている地域での強みを評 価してくれ買収後も我々に経営の多くを任せてくれた。」と買収に満足している。

売却によって得た資本を新たな市場開拓に投資する米国企業も多い。JPI社は集合住宅で全米規模のビルダーであるが2023年住友林業に買収されてからは、その資金をテキサス州オースティン、コロラド州デ ンバー、ノースカロライナ州シャーロット、アリゾナ州フェニックスなど中規模の都市で競争が最も激し い市場に再参入している。最近これらの地域ではアパートの家賃が減少気味であり多くのデベロッパーが 撤退している。JPI 社は豊富な資金をバックにこういった地域において集合住宅のシェア拡大を狙っている。レントが再び上昇するまでの体力を強みとして、前述の中長期戦略を実行している。
同社CFOモーリーファデュール氏によると「住友林業は長期計画を視野に入れている。そのおかげで他社の体力が続かない市場で我々は市場を拡大することができる。」と自信を深めている。