ロケット社レッドフィン社を買収

(経済レポートを要約)

住宅ローン大手のロケットモーゲージ社のホールディングカンパニーであるロケット社は不動産ポータル大手レッドフィン社を17億5000万ドルで買収すると発表した。ロケットモーゲージ社は元 Quicken社である。
ロケット社CEOバランクリシュナ氏は「レッドフィン社はAIを活用して不動産情報を提供するポータル大手であるとともに仲介会社でもある。取扱物件情報は1億件、ユーザー数は5000万人、数千人の優秀なエージェント、4ペタバイトに及ぶデータを誇っている。一方ロケット社は40年に及ぶ住宅ローンを全米3000以上の郡に提供する住宅ローンでは代表的な企業である。両社の統合はWINWINだといえる。」 と述べている。

ロケット社にとってのメリットは以下のようになる。
1. ロケット社のシステムにレッドフィン社の5000万人に及ぶメンバーが加わる。レッドフィン社が有する年間売買件数 100 万件、2200人のエージェント、42州での営業体制によってロケット社の
市場における存在は巨大になる。
2. 住宅ローン売上は相当な伸びが期待できる。
3. 4ペタバイトに及ぶレッドフィン社のデータによりロケット社はさらにDXを促進できる。
4. 経営統合によって1億4000万ドルの経費削減、6000万ドルのレッドフィンエージェントによる
住宅ローン営業利益を合わせて2億ドルのプラス効果がある。

ロケット社はレッドフィン社買収によりこれまでの住宅ローン事業一筋から仲介販売、ポータルを含めた 住宅不動産ワンストップ総合企業を目指そうとしている。 ロケット社の住宅ローン事業におけるシェアは現在4%でトップのUWM(United Wholesale Mortgage)社にかなり差を開けられている。買収によって同社シェアを16%くらいまでに伸ばすことが可能だと関係者は見ている。

住宅販売仲介、住宅ローンサービスの両ビジネスは、高金利、価格高騰、取引件数激減によって大きく売 上が下落している。2社の中でレッドフィン社は特に大きな影響を受けて厳しい経営状況に陥っている。 両社株式時価総額を見ると、ロケット社はピーク時556億ドル、現在266億ドル、一方レッドフィン社はピーク時100億ドル、現在12億ドルとレッドフィン社の落ち込みが著しい。レッドフィン社はここ数年で毎年数百人単位の解雇を断行しているが、市場が一向に回復しないため経営状況が一向に改善していない。

レッドフィン社CEOグレンケルマン氏によると、「自社買取モデルであるiBuyerプログラムがうまくいかず不良債権を含めた事業を整理するために多額の損失が複数年にわたって発生したことが経営危機を招いた。一時買取物件は3億5000万ドルを超えており、自社の現金化または購入資金も借入した分もあったため資金繰りが急速に悪化した。不良債権となった買取り物件を処理するためにかなりのディスカウントをして売却したことが経営に響いた。」と説明している。

買収によりロケット社は住宅ローン事業における更なる成長でトップを目指すとともに、ポータルや仲介業も含めた不動産総合企業としてトップのZillow社を標的に捉えるという狙いも見えてきた。