2025年 住宅市場予測

(Realtor.com レポートを要約)

不動産ポータル大手 realtor.comは 2025年米国住宅市場の予測を発表した。トランプ政権になって住宅市場は法規制や税制などで大きな変革期を迎えそうである。というのもトランプ大統領はビジネスマンであるだけでなく自らが不動産デベロッパーであるため不動産市場に関して多くの発言と改革をすることは 間違いない。

大統領が持つビジネス重視の考え方からすると減税、規制緩和、景気浮揚対策などは以前より予想されてきたことである。こういった政策により住宅金利、新築着工件数、住宅の購入難易度は大きな影響を受けることになる。さらに政策金利、インフレ率、失業率、人口構成などのマクロ経済指数が関与することになる。

住宅価格トレンド

昨年ローン金利の高止まりや在庫数が増加したにも関わらず住宅価格は多くの地域において上昇した。そ の上昇率は 2023年の 1.1%から昨年は 4.0%となっている。2025 年は 3.7%と予測される。住宅ローン金利 が 6.3%と少し下落することに加えて、在庫数は昨年より 11.7%増加すると見られているためである。 住宅金利が下がるといっても僅かで毎月の支払いにしてあまり大きなインパクトはないが景気刺激策によって個人所得が伸びるため物件価格は堅調に伸びると見られている。減税となればその動きがさらに加速するはずである。

売買のトレンド

売買件数は昨年より少し伸びて年間407万件、1.5%アップと見ている。住宅金利が少しでも下がればその効果はすぐに現れる。

2025年住宅市場主要指標

(上から住宅金利、中古住宅価格上昇率、中古住宅売買件数増加率、中古住宅在庫数増加率、新築戸建着 工件数増加率と件数、持ち家比率、レント上昇率。左から 2025年予測、2024年集計実績、2023年実績、 2013-2019年における平均)

在庫数のトレンド

2024年にそれまで在庫が極端に少なかった状況からは少し緩和される状況になった。今年はそのトレンドが続くと見て良い。在庫数は昨年より 11.7%増加すると見られる。一昨年から昨年までの在庫数は 15.2%伸びている。それでも2017-2019年における在庫数からすると 23%下落しており、まだ正常な市場に戻っているとは言い難い。売り手が売らない・買い手が買わないといういわゆるロックイン現象はまだ終わったわけではない。多くの売り手にとって年率6−7%という住宅ローン利率は家を買い換えしようと いうモチベーションにならない。そのため多くのホームオーナーは当分現状維持を決めている。動くとすれば離婚、転勤、リタイア、結婚、出産といった転居が避けられない事態に陥った場合しか考えられない。

レンタルトレンド

レンタル市場はアパートなど集合住宅の供給数に影響される。昨年の年間新規供給数は658,000件であっ た。空室率は 6.9%で少し上昇している。しかし 2013-2019年における平均空室率は7.2%でそれよりも高 い。供給数が増加するため今年の空室率はほぼ7%を超えるレベルになると見られる。 賃料は昨年よりわずか0.1%下がるにとどまる見込みである。賃貸を目指す人たちは賃料が安くで就職先が多いテキサス州オースティン、オクラホマ州オクラホマシティー、アラバマ州バーミンガムといった南部に位置する都市を狙っている。

人口トレンド

米国世帯数は今年対前年比で140万世帯、比率で 1.1%伸びると予測される。住宅価格上昇と高いローン金利のために新規世帯はその大半が賃貸市場に流れる。そのため持ち家比率は昨年の65.6%とほぼ同じ 65.3%に落ち着くだろう。経済成長率は 2.7%、インフレは 2.1%-2.4%と政府が目指すゴールより高いもの の長期的に見れば低く抑えられている。失業率も 4%前後と低い。世帯収入の伸びは 3.4%とインフレ率を上回る。こういった指標から景気が極めて堅調であることが伺える。ただ住宅価格は収入の伸びを上回る ため今後も住宅購入は多くの人にとって難しいゴールであり続ける。 アフォーダビリティーは平均価格の住宅を購入するために20%の頭金を支払って 80%を 30 年固定金利で ローンした場合、何%の世帯が住宅を購入できるかという指標である。2024年は 30.1%であったが 2025年は29.2%とわずかに下落して僅かに購入しやすくなる。この指標もこれまでの平均と比較するとかなり低く依然住宅購入は庶民にとってハードルが高い。

不確定要因1

最大の不確定要因は住宅金利である。当初下がると見られていたが、トランプ大統領の景気刺激策や減税は全てインフレ要因となり金利を押し上げる可能性が高い。ただ景気が少し落ち込んだ時点で FRBが公定歩合を思い切って下げる可能性もあり、予測が難しい。

不確定要因2

政府の経済政策がどのようになるかも読みづらい。特にトランプ氏から住宅供給数不足が指摘されており、その数は 250 万から720万戸に達すると見られる。連邦政府所有の土地を住宅建設に提供するという提案も出ている。また大統領はインフレ対策を実行すると公約しているが、減税、関税による輸入品価格 高騰、減税は全てインフレ要因となるため実現が難しい。また関税や厳しい移民政策によって人件費も高騰するだろう。それを上回る個人所得が確保できるのか今のところ予測不可能である。