住宅売買のルール改定の影響

(業界ニュースを要約)

8月17日より改定された米国住宅売買のコミッションに関するルールによって既に実際の取引に影響が見られた。まず多くの買い手が一連の手続きに混乱している。特に買い手エージェントと交わすコミッション契約には消極的である。一方売り手は多くのケースで買い手エージェントに対するコミッション支払いに同意しているが、一部の高価格帯地域やホットな売り手市場地域においてはこれまでと同様のコミッションを支払うことに難色を示すケースが見られる。

• 全米各地域で新ルールに対して温度差がある
• テキサス州オースティンのような買い手市場においては売り手が従来のように買い手エージェントにコミッションを支払うやり方が継続されている。
• サンフランシスコやボストンのような売り手市場で、在庫が少ないエリアでは売り手エージェントのコミッションは買い手のオファー次第・交渉次第で決まる。
• 買い手エージェントに支払われるコミッションの平均は価格の2.55%で今のところ大きな変動はない。
• コミッション額がMLSに記載されなくなったため、コミッションに関するデータ取得が難しくなった
• ショーイング(内見)の前に買い手エージェントは買い手にコミッションに関する契約書を渡して合意を求めてからショーイングするため取引の透明性が高まった。
• しかし買い手はコミッション合意書にサインしたがらない。
• 特に買い手専売契約だと一人のエージェント(ブローカー)に一定期間コミットすることになるため買い手は嫌がる。
• 一人のエージェント(ブローカー)にコミットすることなくショーイングする物件だけにコミットしてもらう契約なら買い手は比較的安心して合意している。
• レッドフィン社では買い手エージェントのコミッションを最低1.75%からという低いレートで提供している。
• フィラデルフィア州内のある不動産会社で見られた取引では売り手と売り手エージェントが協議して買い手エージェントに対して価格の1.5%をコミッション額として設定している。その後複数のオファー(申込)が入りどのオファーも買い手エージェントへのコミッションは2.5%を要求してきたが、交渉の結果売り手は1.5%に減額し買い手側もそれに合意している。
• 市場の動向、物件の魅力、売り手の要求などによって買い手エージェントコミッション額は交渉次第であり変動する。
• シリコンバレーなどの高価格帯地域では買い手エージェントコミッションが確実に減額傾向にある。
• 売り手にとって買い手エージェントに支払うコミッションの選択肢は以下の3つである。

1. 全く支払わず買い手に支払ってもらう
2. オファー次第で交渉
3. あらかじめ決めておき売り手エージェントから物件の引き合いがあったときに伝える

• 買い手エージェントにとってはショーイングの前にコミッション額を確認する必要があり、手間が増える。
• 買い手にとってショーイングの時点でコミッション額に同意させられることに違和感が付きまとう。
• 買い手エージェントの存在意義がこれまで以上に問われる。
• エージェントは買い手側より売り手側のビジネスを獲得する方向にシフトする。