マイホーム購入で涙を流す人が増加

不動産ポータル最大手の Zillow 社の調査によると最近マイホーム購入で涙を流す人が増加しているとい う。同社が最近マイホームを購入した米国民 2000 人を対象にしたアンケート調査結果によると、Z 世代 (10-25 歳)では 65%、ミレニアル世代
(26-41 歳)では 61%がマイホーム購入の過程で一度は泣いたことがあると回答 している。全世代でも 50%を超える人が 同様の経験をしているという。

いかにマイホーム購入でストレスが溜まっているかを示す数値であるかがわかる。売り物件数が極端に少 なく、どの物件においても複数の購入申し込みが入って買い手同士で取り合いになり、取れても売り出し 価格をはるかに超える金額でないと購入できないという状態がここ 2-3 年続いている。買い手にとっては まさに受難の時期だと言える。今年売却された住宅物件の約 50%は売却価格が売り手希望価格を超えて いる。2021 年にこの割合が 37%であったことを考えてもいかにホットな市場であるかがわかる。

また融資を受ける買い手にとってはキャッシュバイヤーが最大の敵であり、キャッシュバイヤーのおかげ で購入できなかったケースが 30%以上あったという。

Zillow 社マーケティング部長アマンダペンドルトン氏は「マイホーム購入は他の資産購入と同様パーソナルなもので感情的になる。買い手が購入申し込みをした時点でその家に住んでいる自分を想像してすで に自分の持ち物になった気持ちになる。それを他人に取られたとわかると、自分の未来をもぎ取られたように感じてしまう。その時の喪失感と失望感は多大なものである。」と説明している。

泣かなくてもマイホーム購入がストレスを生むと回答した人は全体の 90%を超えている。

この 1-2 ヶ月で住宅ローン金利が急上昇して売り手市場が少し緩和される兆しが見えてきた。一方で昨年 3 月から今年 3 月までにおける米国住宅価格の平均値は 20.6%アップという驚異的な値上がりを記録して いる。金利の上昇により買い手の数が少し減ってきたようであるが、供給サイドの住宅建築数が減ってい るので需給が完全に緩和されたとは言い難い。

ストレスの要因を見てみると
⚫ 予算内で収まらない(62%)
⚫ 選択肢が少ない(61%)
⚫ 好きな地域で購入できない(58%) などとなっている。

売り出し物件数はこの1年間で 23%減っている。売り手が売り出すことを躊躇しているからである。理 由は待てばさらに価格が上がる、売っても次に購入する物件が簡単に確保できない、ローン金利がはるか に上がって支払いが多くなるなどが考えられる。 したがってそう簡単に売り手市場が改善されるとは考えにくく、ゆっくりと時間をかけて市場がシフトす ると見て良いだろう。

逆にどうしても売却しなければならない売り手にとっては、できるだけスピーディーに売却を進めた方が 得策と言えるかもしれない。住宅ローン金利にしても早急に金利が下がるとは考え難い。まして 2021 年 におけるような 30 年固定金利型が 3%前後という状況に戻ることはまずないと考えて良い。

住宅ローン金利の推移
(%、2020 年 6 月から 2022 年 5 月まで、グリーン:30 年固定型、ダークブルー:15 年固定型、パープ ル:5 年変動型)